「凡事徹底」

1月30日（火）

　当たり前のことを当たり前にすることが大切ですね。昨年のブログで中小製造業の操業率がコロナショック前を超えていったという話が報じられたということを綴ったことがあります。こうした話題は誰が聞いても「嘘」という話であって今は一切触れられることもありません。こうした不可思議なことは過去に何度も起きています。その中の一つ、2015年、三菱自動車のディーゼルエンジンで排ガス試験での不正が明らかになり、三菱自動車は大変な事態に追い込まれました。この時も、朝のNHKニュースでトヨタのディーゼルエンジンについても基準値違反（不正）が明らかになったという話題が報じられたのですが、夕方には報じられることがなくなっていました。感覚的には「何が起きた」という話で社内でも大きな声で私が話していましたので、わが社の幹部たちは今でも記憶しています。それが今、このタイミングで大きく出てしまいました。問題がディーゼルエンジンであること、そしてその販売先に欧州が含まれていること。これはちょっとやそっとでは修復することが出来ない問題になっていくと想像します。本当に何が起きているのでしょうか。欧州に対するペナルティは大変なことになると思います。また、現在全業種型不況で唯一のけん引がトヨタさんだけで、そこまでが壁に当たってきますと税収面でも大きな問題は起きてくるでしょうね。こんな事態に会社が追い込まれているのに、社員さんたちは「月額2.8万円の賃金アップ、7.8か月の一時金を春闘で目指していく」と不正が10車種に及ぶと報じられる同じ紙面で報じられていました。「日本はどこに向かっていくのでしょうか。」

　経済は循環していますので、こうした影響は必ず当社にも及ぶと思いますが、どんなことがあっても目の前のことを正直に、そして当たり前のことを徹底して進めていくことが大切なのだと思います。マツバラでも以前にこんなことがありました。昔、恐らく20年ほど前までは材料の純度が高く、銑鉄などは鉄鉱石をベースとして製造していました。しかし、コスト低減や原材料高の影響を受けてリサイクル材料を鉄鋼メーカーがどんどん使用するようになり、時系列的にその純度が落ちてきました。また、当社で使用するスクラップ等もどんどん純度が落ちていき汚れていきました。燃費を上げるために軽量で高強度が求められるために、どんどんと合金が鋼板などに添加されるようになっていったことが影響していると思われます。また、耐震強度といった話も背景にあります。このように汚れた材料しか使用できなくなってきますと、マツバラの鋳物も時系列的に不純物の含有量が増えていき、この不純物が酸素と触れることでスラグ化して良品率が落ちてきたり、溶湯の凝固速度が速くなってきたりしてしまうことで鋳巣が発生するといったことが顕著になってきました。そこで管理するシリコン値を下げる指示を私が出したのですが、そうすることにより管理している（お客様に基準値として提出している）数値を下回ることになるという結果になってしまう事態になりました。そもそもその基準値はお客様とマツバラの目安として決めた数値であり、JIS等の定められた数値にはこうした基準は存在していないこと。その上で30年ほど前に決めた数値であり、その主目的は強度を出すためのものであり、不純物の影響でむしろ強度は高すぎるほどに出ていました。こうした背景から、その数値にこだわる必要がないのではないかという話を私（社長）がしました。私の心にあったことは違反をしてよいということではなく、お客様との約束は製品の中に含まれるシリコン値であり、シリコン値の測定試験は元湯と呼ばれる溶解時の溶湯により行われていて、その後の接種（生産プロセスの一つ）の段階でシリコンをさらに投入しているので、元湯では規格外でも製品としては規格に入っていることは確実ということでした。しかし、このエビデンスが取れていない以上「絶対にダメだ」と生産を許可しなかった人たちは当初リーダーであった品質保証部の現係長、そして現リーダーです。今ではエビデンスをしっかりと明確にし、改善が進められています。昨今、大きなコストダウンにつながる改善の中でもこうした徹底した試験が繰り返されて量産へと進んでいます。何か凄いことのように感じますが、当たり前のことなのだと思います。大きな声の人が何を言おうが、当たり前が当たり前に進んでいく重要なことだと思いますし、それこそが先人が築いた日本品質なのだと思います。

　昨日の調整日では皆、ツナギを着て真っ黒になりながらそうじをしてくれました。その最中に少し覗きましたが大変な埃が工場内を舞っていました。しかし、今朝工場を巡回しますと驚くほど美しくそうじされています。「凡事徹底」本当にマツバラは良い会社だと思います。世の中はどんなに心を疑うようなことが進んでいても、こうして素晴らしい社員さんたちが安心させてくれます。本当にうれしい限りです。さあ、今週も操業が始まりました。凡事徹底で「負けてたまるか大作戦」進めていきましょう。

社長　松原史尚