「改善提案」

「改善提案」

11月14日(月)

以前にもブログで書きましたが、当社では改善提案という制度を30年以上に渡って続けています。毎月200件近い提案が社員さんから寄せられます。

その今月分の全社員さんの提案用紙が金曜日手元に届きました。週末、時間があったのでいつも以上に時間をかけて1件、1件丁寧に読ませていただきました。今回に限らず、全ての提案にを私が目を通しまています。いつも感謝をしながら読ませていただいています。

時代は全ての物の値段が上がる超インフレ期にあります。その価格転嫁が確実にできなければ、企業は消滅していきます。自社が社会にとって必要とされる企業であるならば、絶対に値上げを進め、利益を確保し企業存続を図っていかなければならないことは明確です。

従って、当社でも確実な値上げを進めさせていただいています。今回の提案の中で、私が最も高い評価をしたのは、この値上げの進捗管理表の作成についてです。お客様ごとに、商品ごとに値上げの進捗が確認できるようになっています。今回は原材料費、そして労務費の値上げを進めさせていただいております。この表による進捗管理の結果、確実な値上げをお願いすることが出来ています。現状、材料費は100%お願いする事が出来ています。しかし、労務費については、まだまだ十分な理解が得られておりません。しかし、この先人材の確保は加速度的に困難さを増し、インフレに対応する昇給が出来なければ確保以前に流出に歯止めがかからなくなることも容易に予想が出来ます。当社では、既に2021年春に平均3%の賃上げを実施しましたが、2023年春にはベースアップを含む更なる賃上げを計画しており、こうした方向性が超人手不足社会の中で人材確保に寄与していることは間違いなく、その原資はお客様に負担していただくことが急務であると考えます。そのための進捗管理がしっかり出来ていることは大きな改善であると思います。

しかし、一方で上昇する費用を全てお客様に転嫁することが良いことなのかというとそうではないとも考えます。当社が、お願いしているのは材料費、燃料費、接種などの直接補助材料費、労務費に留めています。電気代を中心にまだまだ理解を頂けていない分野も多くありますが、それ以上に修繕費や、消耗品費、炉を作るための関節材料費、余熱のための重油などの燃料費、造型機を動かすためのオイル、離型剤等、上げればきりがないほど多くの購入費用が上昇しています。こうした費用上昇は現状お客様の値上げには含まれていません。その費用を補っているのが、改善です。そして、実施した改善を報告してもらっているのが改善提案です。

例えば、今月の実施報告(提案)の中からいくつを紹介します。

溶解炉を築炉するためのレンガやモルタルの費用、炉底を固めるための材料費の上昇は月額200万円を超えています。全てを価格転嫁するのであれば、当社の現状では1.5円/kg程度鋳物の代金を上げていただかなければいけません。以前におそうじによる改善で話した、溶解関連のトラブル回避で年間1200万程度のコスト低減が出来ており、その額は月額100万程度になります。そこで、今回出てきた提案が、炉底にを固めるのに使用する材料費の低減です。材料の配合比率や分量を分析し少しずつ改良を試行錯誤を重ねていき、最終的に高価な材料の添加比率を低減することで、年間500万円程度のコスト低減に成功したというもの。この2件では完全に値上げ分の回収には至っていませんが、8割程度の値上げ分を吸収することが出来ています。こうした改善は材料が上がっているが、価格転嫁できないという現状の課題に向き合うことで生まれています。大切なことは、課題をしっかり把握し、改善をするという意思を持つことだと考えます。

他にも、ある小ロット製品を加工するのに使用していた特別なツールを常時生産する製品のツールと共通化することで特別なツールの購入を廃止し、コストを低減することが出来たという提案もありました。簡単なように聞こえますが、出来るのであればとっくに進めています。そこにも試行錯誤があり、時間をかけて共通化に至っています。特別なツールと量産用ツールでは、費用も大きく異なります。

あるお客様2社に納入させていただく製品は、常時再仕上をしていますが、再仕上をしていない製品同様の梱包作業が行われており、2度も梱包作業が行われていました。これは明らかな無駄ですが、気が付かないところで行われている無駄も時にはあります。こうした無駄を排除することで、月額1万円の梱包費が削減できたという報告もありました。1万円ですが、500万円は1万円の積み重ねで生まれてきます。

今年度は全社的なDXの推進を目指しています。品質保証係では、品質検査報告書が常時必要となる製品を、当日の生産計画をもとに拾い出していました。その検索に1時間程度を常に要していたそうですが、データベースの中で生産計画と連動させることで、計画が出来たときには検査報告書の作成指示も一緒に出てくるような仕組みを造り上げたという報告もありました。

人は宝です。これまでもそうでしたが、最近更にその価値が上がっています。こうした背景の中で、生産管理係では、これまで新しい社員さんが入ってくると、口頭で教育をしてきた多くの業務があったそうです。もちろん、マニュアル化されているものもあったのですが、こうしたマニュアル化されていない業務を完全に改善したという報告がありました。マニュアルを拝見させていただきましたが、このマニュアルを見れば、生産管理の業務を全く知らない私でも生産管理業務が出来るほどわかりやすくまとめられていました。

まだまだ紹介したい提案が今回も本当にたくさんありました。今回も社員さんの改善スキルの高さに驚かされました。お客様に値上げのお願いをさせていただきます。しかし、お客様も、お客様のお客様や、最終ユーザーさんに値上げのお願いをしなければなりません。その大変さを考える時、自助努力も絶対に必要です。また、かかった費用をすべて商品に上乗せるだけでは、我が国の国力の低下にもなります、最終製品として仕上がる前に、そこに携わる全ての生産者が衆知を集めて商品の価値を創造することなく我が国の未来はないと思います。当社は、こうした素晴らしい社員さんたちが日々改善を重ねてくれています。そして、こうした費用をすべてお客様にお返しするのではなく、しっかり社員さんたちにも還元することで、社員満足度を向上させ、離職率の低い企業、また人財が確保できる企業へと更なる進化を遂げていくことが大切で、その結果人手不足社会の中でお客様に安心を提供できる会社になっていくことが出来ると考えています。

社員の皆さん、今月も素晴らしい多くの改善報告をありがとうございました。私は本当に幸せです。皆さんが私に安心をくれています。

心からの感謝を込めて。

社長 松原 史尚

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