11月15日(金)
本当に記憶がないほどいつの日にかぶりにお客様の所へ出張にきました。社長になったころ、リーマンショック明けで操業度が7割程度だったころに多くのお客様を訪問させていただきました。製造出身の私は安価に物を作る自信がありましたので、思い切った値段を出して受注の確保をしました。多くの受注を頂戴することができました。受注が少しずつ増える毎に収益性は高まり操業度が95%になる頃には大きな収益を上げました。顧問先の会計事務所からその年の経営改善賞の推薦があったほどです。しかし、操業度が100%を超える辺りから機会損失が増えるようになりました。時代的にはアベノミクスが始まった頃で見積もった量をはるかに超えて受注が入るようになりました。操業度が115%レベルになると、もうミスの連発となりました。それは決して社員さんたちが悪いのでなく、安価で多くの注文を受け過ぎた私の責任でした。ミスが多いのでお客様からも叱責を受けることも多くなりました。当然なことですが、これだけ受注が一気に増える時は材料費が一気に値上がりしていく時でもあります。従って、3か月後6か月後の値上げのタイミング(サーチャージ制度)ではとても対応できないレベルで仕入れ値が上がったことも赤字に拍車をかけました。金融機関も冷たいもので操業度が100を超えての赤字に対しては手のひらを返したような事態となりました。金利が跳ね上がる、タームが大きく短縮されるといった事態にもなりました。正直社長になって今までで一番辛い時期でした。
赤字は1期までと「有難う」の経営を始めたのはこの頃です。マツバラから鋳物を買うことを「ハッピー」と感じてもらえているお客様にのみ買っていただく。その選択法として値上げをお願いしました。もちろん、商売ですから転注されることは仕方がないという覚悟もしました。ちょうどバランスよく価格のみで判断されていたお客様が他社に転注をされました。不思議ですね、この折に転注をされたお客様のほとんどが何かしらの事態に後ほどなられました。上場廃止、事実上の倒産といったことにもなりました。その値上げは副社長がしてくれました。それ以来、私は営業の場所に出向くことはありませんでした。何かしらの表彰を受けるような時には社長が出向くことをお客様も望まれましたので、こうした折には出かけましたがそれ以外は出ていきませんでした。
ということで久しぶりに、本当に久しぶりに出かけました。今回、呼ばれるたわけでもなくあえてお願いして訪問の機会を頂戴したのは、注文が欲しいという下心があったのも事実ですが、それ以上にお役に立ちたいという気持ちがあったからです。今回訪問させていただいたお客様も部品を製造しておられます。私たちはその部品の部品を生産しています。ということはこのお客様も我々同様大変な事態になっておられるということだと予想したのです。私たちが頑張ることで必ず応援できることがある。そう確信したので、訪問させていただくことにしました。特に今回のお客様も海外に鋳造工場をお持ちです。お客様の海外の鋳物工場での生産性の向上に向けても私なりにアイデアがありましたので、こうした提案もさせていただきたいとも考えました。本当に大変な時代です。オールジャパンで乗り切る必要があると考えたのです。たくさんの提案や現状の鋳物づくりの課題、その課題は恐らくお客様の海外工場でも直面しているであろうと考えた上で、その課題を解決する案についても話させていただきました。「本当に学びになった」と多くのメモを取って「有難うございます」と言っていただけました。今回の訪問は「先ずはお役に立つ」この姿勢で出向き来ました。大変な時代に下を向くだけでなく、未来への石を投げることが出来たと感じています。「有難うございました。」帰り際に再度そう言っていただけただけでも来た価値があったと感じています。
さあ、週末です。来週もまた頑張っていきましょうね。「Have a nice weekend.」
社長 松原 史尚