「善いことをせよ④ 相対」

「善いことをせよ④ 相対」

11月28日(木)

 経営をする上で絶対に頭に入れておくべきは「相対」という考え方です。先週綴ったリーマンショック明け、尖閣ショックやタイの洪水、そして東日本大震災、度重なる負の連鎖と、超円高社会の中で多くのお客様、仲間たちが中国や東南アジアへ生産拠点を移す動きが加速していきました。こうした時代背景の中でも日本での鋳物づくりに拘り、当社の製品だけでなく、社会循環を維持する正義として思い切った価格での受注を展開しました。一時はこの施策が功を奏し大きな収益を上げることが出来ましたし、協力企業さんたちにも息を吹き返してもらうことが出来ました。しかし、民主党政権の崩壊、アベノミクスの始動により、超円高からの脱却により材料価格が暴騰する事態となりました。操業度が110%を超える中で大赤字になりました。ただ、社員さんにも協力企業の皆さんにも多くの分配をすることが出来ました。赤字は決して良いことではないけれども、結果として多くの製品を海外にシフトさせることなく、国内に留めることが出来たことは後には善かったと思っています。

 作用と反作用、善悪、強弱、貧富、賢愚、不可思議ですが全ての物に相対が存在しているのです。上記のような急ハンドル、急アクセルは、一気に大きな効果はあっても、必ず反発する力が働くということを予想しておくことが大切です。日本から仕事がどんどんなくなっていく時代には材料費は値下がりしていくのは需要と供給のバランスの中では当然のことです。そして時代は悪い時ばかりではないということ、時代は巡るということを頭に入れ、急激な変化を起こすべきではないというのが原則だと思います。ただ、あの時、思い切った行動をしていなければ、あの時点で会社は頓挫していたと思います。相対は意識しながらも、動機が善であれば天が味方をしてくれます。次の価格調整時期の前であっても期間内に10%を超えるような急激な価格変動があった場合(上下含む)には期間の途中でも価格調整をさせていただくという契約をお客様と結ばせて頂けたのもこうした反省があったからです。

 挑戦をすれば、失敗をする時もあります。また、時間をおいて過去に打った手が大きな問題になってしまうこともあります。それでも動機善なら、必ず天が味方をしてくれます。また、しっかりと反省をし、問題点の真の原因を掴み、対策を打てばよいのです。15年の社長ライフの中で何度も失敗をしています。ただ、動機善で犯したミスは絶対に取り返し、やり直しが出来るものです。しかし、社会を観るに自分勝手、自分さえよければという考えで犯したミスは企業を窮地に追い込むような大きな問題となってしまいます。常に三方ヨシ、時に三方痛み分けの考えで判断をすれば絶対に窮地に追い込まれるほどのミスはしません。

 昨日の社長晩餐会でも、良く知る先輩が実経済と、メディアの報じる経済の大きな乖離について話しておられました。正に同感です。過去の反省を活かして、1社依存、1業種依存という受注スタイルからの脱却を目指し、成し遂げてきました。自動車、家電、建設機械、農業機械、産業機械、インフラ関連、住宅関連、多くの産業の仕事をさせていただき、お客様も100社を超えています。その全てが今不況感を感じておられる。ただの1業種も好調な分野がないのです。経済をけん引する業種がないのです。鋳物は5千年の歴史をもつ産業で常に産業の礎なる尊き仕事です。その我々のお客様が本当に苦しんでおられます。過去、我々が苦しいけれどお客様は元気が故にお客様に泣きを入れてご支援を頂戴してきました。しかし、今、お客様が苦しんでおられるのです。今こそ、動機善として再び大きなチャレンジをする時が来ていると思います。新社長の方針の下、お客様の真のニーズを捉え、「え、そんなこと出来るの」、そう言っていただけるような大きなチャレンジをする時だと思います。

 世には万物に相対が存在します。故に、急激な変化をさせることは良くないのです。しかし、大きな時代の変革期には「改善・改革・革新」といったものでなく、全く新しい手法で一から仕組みを変えるくらいの思い切った行動が望まれると思います。それには、先ずTOPが変わることが一番です。TOPが変われば会社が変わりますから。動機善で、大きな志を持って大きな変化を起こして欲しいと願っています。

社長 松原 史尚

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