12月3 日(火)
やはりインフルエンザとはなかなかのものです。高熱と咳が続いて1時間おきにトイレに行きながらしんどい時間を過ごしました。それでも12時間以上寝ていると何とか身体は持ち直してきました。夕方には熱も平熱に近くなってきました。薬のおかげですね。段々と医学は進歩しています。小学生の頃は、先ずはお尻に注射をされて、そして夜寝る前にはお尻から解熱の座薬を入れる、それがインフルエンザの対応方法であったと記憶しています。それでも熱が続くと脱水と解熱対策として点滴をされるという感じでした。発症すると10日間は学校に行けなかったと記憶しています。最近まではタミフルとかリレンザという薬が現れ2~3日服用すると2日目頃から熱は下がり1週間程度で仕事に戻れるようになりました。それが今回は発症後すぐに飲めば効果があるという2錠を服用すれば良く、その後の薬の服用も無いという新薬が出ていました。熱が下がって3日目には出社が大丈夫ということになったとお医者様に知らされ、現時点で熱も平熱になっているので金曜日には会社に行けるということになりました。医療の進歩は本当に凄いと思います。この医学の進歩は、やはり「社会の困った」を解決したいという多くの人たちの大きな情熱が解決してきたのだと思います。
そんな姿勢は鋳物づくりにも大きなヒントになるのではないでしょうか。10月後半から非常にベストに近い溶解が出来て月次決算を黒字化させてくれました。異常に気付いたのは9月の初旬、絶対にどこかから風が漏れている。そのように話したのですが、現場からの回答は「漏れていない」ということで色々考えて改善を繰り返したのですが結果的には漏れていることが判明し、その手を打った後に劇的に好転をしたのです。11月の前半に入り、再び操業日報を風漏れと同じ症状を示し始めました。キュポラの溶解は単重なものです。下からブロワーで風を吹き上げる、その風を上で吸収し熱交換器に送られて温度を上げた風が循環されて再び吹き込まれるという仕組みです。その工程でどこかに穴が空いていれば余分な風を下から入れなければならなくなるのです。同じ風量ではキュポラ内の圧力が上がって来ないという症状が出始め、その症状を観て異常と判断するのです。最近風漏れという事態が頻発していたので瞬時にこちらを疑ったのですが、どうやら今回は風漏れでなかったようです。キュポラからは溶解の段階で出た粉塵を集塵機で吸うという作業が行われます。つまりは漏れるとは逆でこの風の行き場がなくなると同じ風を入れても風が入っていかないという症状が起きているのです。循環している中のどこかかが詰まるという事態が起きれば正常な循環が出来なくなるということです。それでも鉄を溶かさなければならない余分なエネルギーを使用して多量の風を送り無理やり溶かすことになるので余分なコストがかかるということになるのです。このケース集塵機の炉布が詰まるという現象で以前にはよくありましたので、非常に注視して観てくれておりこまめな交換もしてくれているようなので、ここには異常がなかったことも発見が遅れた理由の一つのようですが、今回は煙道が詰まった(狭くなった)ようです。ここが狭くなればプッシュしてもプルしないとなるのです。今回のケースは排ガスを戻す制御弁の調整に問題があったことが判明しました。煙道は外気温度に大きな影響を受けます。従って冷えてくると結露で詰まりやすくなるというものでした。今回の症状として「排ガス温度が上がらない」という会議の中での現場の声が。この異常を見抜く結果に繋がりました。先週の会議に現場の当事者がいないことを問題視したブログを綴りましたが、やはり当事者が全て揃うことの大切さを実感させられる局面でした。ここには大きな学びがあります。キュポラに循環させる熱風温度が高いほど送られるエネルギーは高く、小さなエネルギーで溶解できるので低コストで溶解できるようになるのです。そのためには上に送られる排ガス温度が高いと良いのですが、あまり高すぎると一部のダストが半溶融状態となって熱交換器や集塵機に送られて熱交換器内部に溶着するなど炉布を詰めるということになってしまいます。実質的には1200℃近くなる排ガスを制御して900℃レベルで送るように制御しています。今回は夏場と冬場で制御温度を変えていなかったのが原因と判明しました。これは大きな発見でした。夏場は湿度が高い分、この湿度を無くすところからシステムが循環するので、本来冬の方が溶解実績は上がるはずなのに近年、冬場に何故だか実績が下がるという状況が続き、何度もおかしいと言い続けてきましたが、やっと犯人が判りました。何でもそうですが「循環」ということを常に意識することを今一度意識するようにしてください。そして改善とはその循環のボトルネックを解消することです。今回は制御する温度を夏場は850℃、冬場は900℃としました。しかしこうした数字は絶対ではないはずです。これからさらに冷え込む12月後半には910かもしれません。1月2月の真冬には930かもしれません。逆に35℃を超えるような真夏には840かもしれません。ただ、実際に炉布の詰まりや熱交の溶着が報告されていないという結果は、夏場もセーブし過ぎているのかもしれません。導入当初1100℃に近い排ガスを送ってしまった経験から一気に850℃で制御がかかるようにしたのですが、その数字が本当に正しかったのかの検証は必要と思います。せっかくのエネルギーをセーブしてキュポラに戻しているのです。このセーブする割合が少なければ少ないほど低コストで溶解が出来ています。長野県にある鋳物工場は熱風の温度が600℃レベルと聞きます。従ってエネルギー効率が良いので、この会社のコークス比率はマツバラよりも15%低いと聞いています。今回の件は大きな学びのはずです。昨日の会議で決めた夏850℃、冬900℃は当面の改善は出来るでしょう。ただ、更なる大きな改善の種がまだ眠っていると感じるべきです。そして最終的には外気を計測して制御温度が自動で変化させられていくようなシステムになっていくべきだと考えます。風漏れもサーモシステムなどを使えば漏れている個所が瞬時にわかるようになるはずです。「循環」と「ボトルネック」常にここを意識した生産を全ての工程で意識するようにすると大きな改善が出来るはずです。いずれにしても、ここ数年起きてきた冬場のブレーキの原因が掴めたと思います。その意味では今期の大きなプラス要因になるのでとても嬉しいです。先ずは900℃で良いのか、更には朝晩氷点下に近い朝晩は920℃、日中10℃レベルに上がる時には900℃にするといった対応も必要かもしれません。何よりも冬場はこまめに煙道のチェックと整備も必要でしょう。「自ら考え行動する」自責の精神を常に持ってください。
恐らく、この排ガス温度の制御に関する件だけでも大変な数の改善提案が出せるはずです。新社長を喜ばせるほどの改善を出してください。そして今月のように社員全員が当事者(表彰者)になるような現状を継続してくれると嬉しいです。
社長 松原 史尚