「リーダーの資質」

「リーダーの資質」

3月22日(水)

 本日のWBC日本の必勝を祈念しながらブログを綴っています。予選の時にはアメリカにいました。そして、現在は日本にいます。私がアメリカにいる時には日本で試合があり、帰ってきたらアメリカで試合をしています。ということで、実は全試合結局生でテレビ観戦できていません。そこで、昨日はビデオに撮り家で結果を知りつつその様子を除いてみました。昨日、大谷選手のセーフティーバントについて少し書きましたが、今回も大谷選手の行動に本当に心から感じ入るものがありました。そして、それは経営者にとっても非常に大切なリーダーの資質でもあると感じました。

1.勝つためにどうするか

 自分が活躍するというよりは、チームが勝つためにどうするかという行動が確実にできていたと思います。6回の攻撃から振り返ります。あの時点では3点差ありました。その前の岡本選手とは対照的です。あの時点で必要なことは「ランナーを溜める」ということです。岡本選手はレフトの選手のファインプレーにあってホームランをもぎ取られました。繰り返しますが、ここで大切なことは1点を取ることでなく、3点を取るための施策なのです。仮に1点でもホームランを打てば、メディアにも報ぜられるでしょう。野球というゲームは9回終わった時点で相手より1点余分に取っていれば良いのです。恐らく、ホームランを打つ能力も技術も岡本選手よりも大谷選手の方がより秀でていることは間違いありません。それでもイニングの先頭打者に求められるのは出塁することなのです。特に試合の中盤になると3対1のランナー無しよりも3:0でノーアウト1塁の方が守る側には心的負担が大きいものなのです。大谷選手の長打を警戒し後方に守る外野手の手前に落とされたのでは、ファインプレーを連覇するレフトの選手でも防ぎようがありません。このイニングは満塁の機会をつくるも得点にはなりませんでした。その行動は次の回にも出ます。2アウト1塁で大谷君の打席です。相手にとって一番嫌なことは、このケースでは大谷選手の一発(ホームラン)です。しかし、ここでホームランが出てもまだ1点足らないのです。そこで、一発を警戒し低めに変化球を集めてきました。その誘いに徹底して乗りません。彼の心にあったのは「3点取るのにどうするか」です。自分のホームランでは3点にならない。その結果の判断は繋ぐ「塁にでる」ということでした。その決断はフォアボールを選んだ瞬間の彼の雄叫びに見ることが出来ました。そして狙った通り「一発出たら追いつかれる」という不安となります。その結果が吉田選手のホームランという結果になったのです。出来る人ほど「俺が、自分が」という気持ちになるものです。メジャーリーグという世界一の舞台でこれまでの記録を次々塗り替えていく、まさに世界一の男、現状では誰も越えられないとされる男の判断は「自分が」ではなく、「どう勝つか」なのだということを見せつけられました。子どもの頃、家に祀られた神社に手を合わせていると、よくおばあちゃんがお菓子屋、時にお小遣いをくれました。私の狙いはお参りでなく「お小遣い」でした。ある時、たまたま通りかかったおじいちゃんが私に尋ねました。「史尚、何をお願いしとる」と。お小遣い欲しいので、お参りしとるふり。とは答えられないので、「俺、頭悪いでちょっとでも頭良くなるようにお願いしているの」と答えると、祖父が話してくれます。「神様はそのお願い聞いてくれないなあ」、「え、どうして」そう聞き返すと。「神棚には何がある」と聞かれ、お供えや榊や色々答えていきながら、最後に鏡に行きつきます。「そうその鏡こそが神様なのだ。ところで、何故鏡が神様なのだと思う」と聞かれたので、そんなことは解るわかるわけもないので、首をかしげていると、「神と鏡の違いは何や」、そして紙に書いて説明をしてくれました「かみ と かがみ」の違いは何かと、最後にはがに〇をつけてくれてはじめて「が、がない」ことに気づきます。それでも私は我=自分という発想すらできませんでしたが、おじいちゃんは「が」というのは自分のこと、つまり神様は自分のお願いや自分に都合の良いお願いは聞きませんということを教えるために鏡としてお祀りされている、だから誰かを幸せにするとか、困っている人が困らなくなるようにとか、そういうお願いなら聞いてくれるんだぞ。そんな話をする祖父の笑顔が目に浮かんできました。そして、大谷選手の行動こそまさに神の行動だと感じました。「自分が」でなく世界一の男の「どう勝つか」の判断です。そして仲間を信じ切る力です。感動を超えて結果は判ってはいましたが涙が出てきました。そして、最終回、1点差での打席は、全くこれまでとは役割が異なりました。先取点をとるために野球が先ず目指すのはスコアリングポジションと言われる2塁ベースにランナーを置くことです。1点差の逆転はまさにこのケースに類似します。ということは、この打席での大谷選手の最低限の仕事は絶対に出塁すること、その上で出来れば2塁(ツーベース)か3塁(トリプル)で出塁すること。ここでも決してホームランではないのです。その決意がスイングにも出ます、決して大振りではなく、コンパクトに空いている外野にボールを運んでいきます。(それがなかなか難しいのですが、それをいとも簡単にやってのけるあたりは凄いと思いますが。)そして、彼のまさに命がけの覚悟が出るのが1塁ベース手前のヘルメットを脱いで走る姿でした。あの1塁ベースを駆け抜ける時点では、2塁打か3塁打かは微妙な位置にボールは運ばれています。ノーアウト2塁は得点濃厚、ノーアウト3塁は得点確実と言われるほどの差があります。そこで「可能であれば3塁を狙う」その覚悟がヘルメットを取り去るときの姿です。0.1秒でも早く走るためです。「命がけ」そう話すのは、万が一にも返球が頭に当たれば、本当に命を落とすことがあります。そして野球では返球が頭に当たることは決して珍しいことではないのです。結果として、2塁ベースの手前で確認すると3塁は微妙なタイミングです、1点差のこのケースイチかバチかの判断でなく、「確実」です。3塁コーチも止まれのサインを出していたはずです。その後の2塁ベース上での大谷選手の行動にも彼の姿勢が見えます。3対3で迎えた打席で同じく2塁打を打った時のメキシコの選手はどういうスタイルだったでしょうか。腕を組み、誇らしげに「どうだ」というスタイルでした、一方の大谷選手はベンチの仲間に向かって「向かってこい、カモン」と鼓舞する姿です。その姿は次の打席の吉田選手にも移っていきます。前の打席はホームランの4番打者です、一番嫌な姿は「サヨナラホームラン」です。ボールになる変化球が主体です。しかし、その誘いには乗りません。大谷選手も、吉田選手も、徹底して繋ぐという姿勢に徹します。しかし、繋ぐ相手はこの日3三振と内野ファールフライ、絶不調の村上選手です。この状態でも、仲間を信じきる。凄い姿だと思いました。このケース、村神様とさえ言われた男の脳裏には「送りバント」さえあったといいます。このシーンでの最悪は引っ掛けてのダブルプレーです。しかし、「ムネのポテンシャルは半端ない」と大谷選手が言うほどの選手です。このシーンで初めて「繋ぐ」という姿に村上選手が変わります。センターから左、ダブルプレーを取られることなく、最悪でも2塁3塁が作れる攻撃のスイングに変わりましたコンパクトに振りぬく。その結果が、センターの頭の上を深々と破っていきます。

 先週どこかで仲間たちが話している「中小企業の社長病と」いう話を耳にしました。何かのテレビドラマでやっていたそうです。「何でもかんでもすべて自分でやってきたような気になっている」。ここに来て、多くの想定外があり、なかなか思い通りにいかない中でのこの話は本当に心に刺さって反省していました。その気持ちの中での、昨日の試合の大谷選手の行動に心から感動し、反省させられました。そして、この先どう生きるかという指針まで示してくれた気がします。

 その時々に求められる行動は違う。そしてその時に求められる行動に徹する。そこには我は存在せず、そして共に戦う仲間を徹底して信じきる。その姿勢こそがリーダーに求められる姿なのだと肝に銘じさせていただける試合でした。

 今日もナイスゲーム期待しています。結果はどうであれ、また学び多き試合になる事は間違いないでしょう。今日も録画をしてきたので、後日しっかり鑑賞させていただきます。

 大谷選手、侍ジャパンの皆さん本当に勉強になりました。感動しました。ありがとうございました。

社長 松原 史尚

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