6月20日(火)
2件の工場見学をさせていただくことが出来ました。ドイツの道路事情は困ったものです。ガイドさんも工事などの情報を事前に収集してくれているのですが、突然の短時間の通行止めが頻繁にあるようで、今回も突然に工事のための区間通行止めに遭遇し、一般道に迂回しましたが、ここでも通行止めにあってしまい、余裕をもって出発したのですが結果的に30分遅れで到着することになってしまいました。そのため、1件目の工場見学は駆け足で生産プロセスを眺めた程度になってしまいました。皆で質問事項をメールで送らせてもらったのでその結果を見てまた報告したいと思います。その中でも気づいた点は非常に人が少ないということ、多くの機械が自動、もしくはロボットで動かされていることが多く、全ての出来栄えをディスプレイ上で管理していたという点です。中子のセットなどは人がしていますが、エアーを吹いている様子はありませんでした。この中個セットも来年までにはロボット化するとのことでした。この会社では、働いている人たちはほぼ地域に住む人たち、外国人の作業者もゼロということでしたが、人口が徐々に減っており、この先は人材の確保には懸念しているとのことでした。一件目は、改めて詳細情報が得られたら紹介したいと思います。
2件目の工場は、M.BUSCH社、生産品目はトラック、建設機械、車両(電車)のブレーキドラム、ディスク、プレッシャープレート、モーターケースなどで100%FC、キュポラ溶解70%、電気炉溶解30%で年間約10,000トンを生産する会社です。
先ず、目につくのが人の少なさ、やはり自動化されていること、24時間稼働で20型を生産なので1時間以上は同じ製品を流し続ける比較的ロットの大きい品物を扱っているから出来ることかもしれませんが、やはりモニターでの管理をしているスタッフが多くいました。溶解、中子のセット等比較的3K的な仕事も目につきましたが、こうした工程はやはり男性ですが、モニターをチェックしながら決め事を管理している場所には女性が多く働いておられました。
これは1社目でも共通していましたが、驚くべき型(方案)設計です、例えばドラムの中心に湯口を立てて、そこにフィルターをセットしてあるだけです、比較的湯口は大きいので、これが押し湯の働きもしているのでしょう。鋳型へのガス抜きはロボットがしていましたが、本当に押し湯を兼ねた湯口だけなのです。これでは、異物が入り込む可能性が高いので、日本では良品率が大きく下がってしまうのでしょうが、先ほどのエアー吹き無し造型ができることいい、「機能上問題ないものは使用する」という仕組みが産業全体に根付いているのだと思います。地球環境配慮(カーボンニュートラル)という観点を強く意識しているからこそ、使用できるものは使用するということなのでしょう。
他にも、私が社内で良く話す「こんな時代がやってくる」という内容がドイツでは既に実施されていましたので、いくつか紹介したいと思います。
1.マテリアルマイレージという考え方
鋳物製品はそのほとんどが機械加工されます。したがって、鋳物工場が機械加工まで実施し、完成品としていった方が、部品一つの完成を管上げた場合に、圧倒的に二酸化炭素の排出量を減らせることになります。Excellence in Finished Castings という言葉が会社の企業理念(営業戦略)としてあり、完成品での納入を目指していくというものです。会社概要説明の中でも、コロナ禍大きく生産量は落とすことになったが、2018年にこの方針を立ち上げ、お客様にもこの方針に同調いただき、完成品比率が増えていったことで、生産量の減少と比較して売上高が伸ばせたことで収益性では大きなダメージを受けなかったと話されていました。
2.原材料のリサイクル
加工により発生する切削粉を発生した場所で再利用することでのメリット。ドイツでは、既に企業毎の二酸化炭素排出量が計算され、その排出量を減らしていくことが、作り手にも、買い手にも義務付けられています。であるからこそ、こうした加工完成品として鋳造、加工の一貫生産が行われること、材料のリサイクル率を上げること、更にはリサイクル材の移動距離にもこだわる仕組みが出来上がっていること。また、前述の良品率、歩留まり向上に向けた取り組みも買い手と売り手が共同作業で進めていることが伺えます。
まだまだ、日本ではドイツのようにこうした明確な方針が出せていませんが、遠くない未来にこうした方向に走らなければならなくなるのであろうと感じています。
ヨーロッパでは、工場のオペレートは可能な限りの自動化で進め、管理するべき項目を明確にし、その管理項目は絶対に守り、その管理はディスプレイ上で行い、多くの女性が活用されています。日本でも、それ以前にマツバラではこうした仕組みをどんどん活用すること、またマテリアルマイレージという考え方をお客様に提案していきたいと感じました。
この先に進むべき方向性について、本当に大きな学びとなりました。
社長 松原 史尚